懐かしのCM「みえる・みえる」、見えたのはインクだけ?
50年前に世間の話題をさらったゼブラのCMがありました。
「みえる・みえる」のセリフとともに目玉が動く強烈なインパクト。ボールペンのインクが減っていくのを大きな目玉が追うアニメーションです。
当時の子どもたちは、怪しげな目の動きと、独特なトーンのセリフに飛びつき「みえる!みえる!」と言い合って笑いを誘っていました。
このCMで宣伝したのは、インクの減りがしっかりと見える透明軸のボールペン「クリスタル」です。
インパクトのあるCMのおかげで、「クリスタル」は大ヒットしました。「クリスタル」の特徴である透明軸のボールペンは今のサラサシリーズにも続くロングセラー商品になっています。
そしてこのCMはもう一つとても大切なものを見せていました。見ていた人はきっと気づいていたでしょう。その大切なものが、今もゼブラの発展を支えているのです。
木の軸からプラスチックの軸へ
1945年、第二次世界大戦の終戦とともにボールペンは日本にやってきました。進駐したアメリカ兵が胸に挿したボールペンは、その携帯性、均一な書き味を持つ便利さがすぐに評価されました。
当社も海外製のボールペンの素晴らしさに感銘を受け、1959年には、ボールペンの製造を開始します。当社で製造したボールペンは、日本独自の本格的な黒インクを採用したことで性能も良く、多くの支持を集めていました。当時、他の日本国内のメーカーと同じように、当社のボールペンでも木の軸を使用していました。
1960年、貿易自由化の波に乗って、プラスチックの軸を使用した海外製品が流通するようになりました。海外製のボールペンはテレビのCMを流し、またたく間に人気商品になっていきました。
インクがあるのに書けない
時代を先取りしたスタイリッシュな透明軸のボールペンは、インクの減りが見えました。一方、「まだインクがあるのに書けない」との消費者のクレームが聞かれるようになったのです。
クレームの原因は、パイプの内側にインクの“残りかす”が付着していたからでした。付着した残りかすと実際のインクとの見分けがつかないことが、まだ残っているのに書けなくなったという誤解を招いたのです。
インクが綺麗に減っていくボールペンを作ったら?
「本当のインクの減り具合が分かったらいいのに」消費者のお声を受けて、私たちは開発に着手しました。試行錯誤を重ねた結果、パイプ内側にシリコンオイルを塗布すると綺麗にインクが減り、パイプの内側にインクが残ってしまう原因を解消できることがわかりました。
インクが減っていくのが誰の目にも分かるようになった瞬間です!!
そして完成したのが「クリスタルS-4100」使っている人の目で見て、インクの減りが正しく分かる商品の完成です。
「みえるみえる」話題のCM
「クリスタルS-4100」が完成した頃、テレビはまだ白黒テレビでようやく各家庭に置かれるようになった時代です。番組の合間に流れるテレビCMもまだまだ手探りの時代ですが、話題となるCMもでてきました。
ゼブラも既に2本のテレビCMを流していました。使っている人の目で見て、インクの減りが正しく分かる商品「クリスタルS-4100」その機能を前面にアピールする内容にしました。
「みえる・みえる」のセリフとともに目玉が動く強烈なインパクト。ボールペンのインクが減るのが見えるという機能性を前面に打ち出したのです。技術に裏打ちされた商品は、もちろん大ヒットとなりました。
驚きは、その当時の子どもたちが、怪しげな目の動きと、独特なトーンのセリフに飛びついたことで瞬く間に流行語となったことの方かもしれません。
品質認知へのさらなる一歩
当社は既に、ボールペンの品質には自信がありました。インクの減りが見えること使い切れることで、品質の良いボールペンの決め手になる。ボールペンを使い切ったお客様には当社のボールペンの品質の良さを実感し、認めてもらいたい。
そこで一歩踏み込むキャンペーンを考えました。
「インクが見えるうちに書けなくなったら、お取り替えします」と品質への自信を高らかに謳ったキャンペーンです。
イメージ向上につながると販売店の協力も得られ「クリスタル」の品質の認知が広がっていきました。
見えたのはゼブラの品質への想い
「みえるみえる」のストーリーは、現代社会における企業活動の「透明性」と言えます。企業活動を公表し、商品の性能を正しく伝え、問題が発生した時には情報を公開する。世界中のどの企業にも欠かせない指針になっています。品質を判断するのは、その製品を使用するお客様です。
CMで使用した「みえるみえる」のコピー。見えたのは「インク」だけでなく「品質」でした。
そして、それにかける当社の想いだったのかもしれません。