2015年夏。ゼブラから新商品「ハードGペン」が発売される。
発売を前に、緻密なペンタッチで多くのファンを魅了する漫画家、森薫、入江亜季のお二人をゼブラに招き、
最新の筆圧測定機を使った科学的なアプローチを交えながら、ハードGペンの使い心地について語ってもらった。

――森先生は現在、どんなペンをお使いですか?

森:色んな種類を使っていますが、カブラペンをメインに使って、丸ペンと、ゼブラのチタンGペンを使っています。

――チタンGペンは耐久度向上を目標に製作された商品でしたが、使い心地はいかがですか?

森:チタンGペンが発売してからこちらに乗り換えて使っていますが、描き味が滑らかで線も美しくて、すばらしく良くなっています。 メインで使ってないせいもありますが、原稿3,4話分くらいの分量をペンの付け替えなしで使えました。

――チタンGペンではどんな線を描きますか?

森:主に太い線を描くのに使っています。サイズの大きな絵や、アップの時のキャラクターの輪郭線を描くのに使っています。他のペンは色んな部分に合わせて使い分けているという感じです。

森薫プロフィール

1978年生まれ。2002年に月刊コミックビーム(KADOKAWA)より「エマ」でデビュー。歴史的アプローチを経て描かれた緻密な絵と温かな作風で人気を博し、「エマ」(KADOKAWA)で第9回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、「乙嫁語り」(KADOKAWA)でマンガ大賞2014受賞。

――森先生は、かなり筆圧が高いとお聞きしましたが。

森:他の漫画家と握力測定して比べたわけではないのでわかりませんが(笑)、高いほうなのかな? カブラペンでもかなり太い線を描いていますが、他の漫画家さんに聞いてみると、「ここまで太い線は描けない」と言われたりしました(笑)。
カブラペンよりも力を入れずに太く柔らかな線が描けるので、キャラの輪郭線と、バサバサした髪質の三つ編みを描くときなんかにチタンGペンを使います。カブラペンで何度もなぞるよりも、一回で決めたい、まとまった太い線を描くのに使えますね。ここへ来る前にハードGペンを使わせていただきましたが、カブラペンと、従来のGペンの中間の使い心地でした。
※注……太い線を、カブラでは何度もなぞって描き上げていたが、チタンGであれば1回で太い線がひける、という意味。

――カブラペンと、従来のGペンの中間というと?

森:とても扱いやすいGペンといった感じでした。従来のGペンって力加減に慣れていないと、ペン先が暴れやすいんですが、ハード Gペンはとても線のコントロールがしやすく、扱いやすいです。(原稿を)急いで描いているときでも、ねらった線が描けますね。 ペン先が柔らかすぎるとちょっとした力の差で線がぶれてしまうので多少の硬さは必要なのですが、ハードGペンはとても柔らかい万 年筆といった使い心地です。
ペン先が、カブラペンよりも開いてくれて、従来のGペンほど開ききらず、細い線も太い線も描けます。 ハードGペン1本あれば、ペンを使い分けることも少ないと思うので、漫画を描き始めた方にもおすすめですね。少年漫画か少女漫画 かによって線の作風も異なってきますが、両方で活用できるのではないでしょうか。

――ここで、弊社の研究所で使っている筆圧検査機を使って何か描いていただけますか?筆圧を立体的に視覚化出来る 特別な検査機で先生方の作画の秘密に迫りたいと思います。

森:(担当者に)何か好きな食べ物はありますか?

――ではリンゴをお願いします。

森:(筆圧検査機にかけながらリンゴを描く)

――(検査結果を見て)いま描いていただいたリンゴの絵では、だいたい筆圧が75グラムほどでした。普通の字を書くときの筆圧が、約100~200グラムほどです。

森:字は直線だから筆圧が高くなるのでしょうけど、曲線だと力を抜かないと描けませんからね。

――黄色が筆圧が高く、青い色が筆圧が弱い部分です。

森:やはり輪郭の部分が筆圧が高いんですね。
入江:リンゴのカケアミの部分は筆圧が弱いですね。

――では、今度は入江先生に、キャラクターの絵をお願いします。

入江亜季プロフィール

香川県生まれ。2002年、ぱふ(雑草社)にて、入江あき名義で「フクちゃん旅また旅」でデビュー。多彩なシチュエーションと文学的表現が織り込まれた 作風で知られ、「群青学舎」、「コダマの谷」、「乱と灰色の世界」(以上、KADOKAWA)で、男女問わず数多くのファンを獲得。

――曲線が、ペンをタッチさせたところからすでにきれいな筆圧カーブを描いてました。漫画を描き慣れていない人だと、ついグイグイと線を引っ張ってしまうところです。

(素早いペンタッチの線を見て)早く描いた線でも、ペン先が紙にタッチした瞬間の筆圧は弱く、線を止めた瞬間の筆圧は高いです。

――今度は、森先生にキャラクターの絵をお願いします。

――(検査結果を見て)非常に筆圧の強弱がはっきりしていますね(笑)。こちらも線のタッチの入りが筆圧が弱く、曲線のカーブ部分で強くなっています。

――(キャラクターの目、鼻、口を見て)やはり絵の中の目立つ部分は力を入れて描いているようですね。

森:目、鼻、口は気合いが入ります(笑)。

――ありがとうございました。本日ハードGペンを使って頂いていかがでしたか??

入江:ハードGペンは、つけペン初心者じゃなくても、おすすめだと思います。 カブラペンより柔らかい線を描きたいけどGペンを使うほどもないときに、ちょうどいいです。太さや柔らかさの点で、ハードGペンはカブラペンと従来のGペンのちょうど中間みたいな感じですね。 カブラペンより柔らかく、Gペンより操りやすく、手が疲れにくいです。握力が強い人にも弱い人にも使ってもらえると思います。滑らかに描けるので、描いていて楽しいです。
初めてつけペンを使うと、きれいな線が描けなくて描くのが嫌になってしまう人もいるんですよ。
森:そういう人はデジタル作画に変えちゃうから、引きとめないと(笑)。

――入江先生にお伺いしたいのですが、どんなペン先を選んだらいいか迷ってる人にアドバイスはありますか?

入江:まずは目につく限りのペン先を使ってみて欲しいです。それぞれのペン先の得意な線は確かにあるのですが、本当に使う人次第なんです。 迷ってる人には、描く喜びを大切にしてほしいです。描く喜びって、ペンというシンプルだけど奥深い道具を使って、線の強弱から生まれる美しさを積み重ねて、表現を広げて高めていくことです。(ハードGペンを使いながら)こういういいものがあるのだから、私もその美しさを探っていけたらなと思ってます。デジタルだと感知できない筆圧もありますし、アナログで、もっともっと上のレベルを追究できるということを忘れないでほしいです。
森:デジタル技術もどんどん向上していくと手描きに近付いていって、意味がなくなったりするんじゃ(笑)。

入江:デジタルだと失敗しても何度も描き直せるっていう利点もありますが、失敗できない時の集中力を思いだして下さい。 携帯電話を使う前って電話番号を覚えてましたが今ではぜんぜん覚えられないじゃないですか。手を使って肉体の能力を引き上げていかないと、描く本能が落ちていきます。
webで発表するだけであればデジタルは良いと思いますけど。 紙の印刷になったとたんに、もう土俵の外で相撲を取る様なものです。
森:webって、線の技術を見せる場ではないんですよね。
入江:使い心地に関して言うと、従来のGペンは筆みたいに柔らかいから、力加減で太くなったり細くなったりしやすいのですが、ハードGペンは線の太さが均一になりやすいところがいいですね。そのうえで線の強弱もつけられます。筆圧で暴れることなく、おとなしくて使いやすい。技術がある人にもこれからの人にも操りやすそうです。
これ1本でほとんどの線が描けると思うので、初めて使うつけペンとしてとてもいいと思います。慣れてきたら、他のペンも試してみればいいのでは。

――最後に弊社のペン先課に何かアドバイスなどいただけたらと思います。

森、入江:いつも本当にありがとうございます。

――いえいえ!(笑)

森:ゼブラがなくなったら、漫画をどうやって描こうかと(笑)。ペン先工場の機械が壊れないでほしいといつも思ってます。
入江:紙やインクは多様にあるのでどうにかなるにしても、ペン先はないと本当に困ります。
森:ペン先は武士の刀のようなものです(笑)。

――こんな道具を作ってほしい、という要望などございますか?

森:枠線を描くペンがほしいです。いま、カリグラフィー用のペンを使って枠線を描いているんですが、通常のペンに比べてインクの調節が難しいので、線が途切れやすいんです。
入江:カラス口(枠線を描くのに使う道具の一種)は、すごく使い辛かった。
森:カリグラフィーペンは枠線の角がきれいに描けるのがとてもいいです。0.8ミリのミリペンなんかも使ってみたんですが、なかなか角がきれいに描けなくて。すごく客幅が狭い商品になると思いますが(笑)、作っていただけたらありがたいです。
入江:これまで2,3年単位でいろいろなペンを試してきましたが、その経験をもとにハードGペンの良さを実感したという感じです。とは言っても、決してハードGペン1本あればすべて事足りるわけではないですし、他のペンを使ったからこのペンの使い方がわかるということもあります。もっと上の表現を追究するためにも、色んな種類のペンを作り続けてほしいです。
森:ハードGペンがあれば、チタンGペンや丸ペンはいらないってなったら困りますね(笑)。
入江:それは困る(笑)。1本で事足りれば理想なんですけど、描く場面に応じてそれぞれのペンの適材適所がありますから、2,3本は使い分けて、表現の幅を広げておきたいですね。

――かしこまりました。ペン先課に伝えておきます。本日はありがとうございました。

森、入江:ありがとうございました。